利賀演劇人コンクール 2012
あの世の三人姉妹

2012年8月24日
作  アントン・チェーホフ
テキストレジ・演出  豊永純子

 

チェーホフの『三人姉妹』を、 私は以下のような解釈にもとづき演出した。

「死者の世界。地獄で暮らす三人姉妹が様々な責め苦に合い、 極楽に行くどころか一生地獄から抜け出せないと悟るまでの過程を コミカルに描いた悲劇。」

三人姉妹が見つめているモスクワは どうにも現実味がなく実在しない空想の世界のように思える。 それはちょうど死者が生きていた頃の生活を懐かしみ生き返りたいと願うような、 実現し得ない夢物語を聞かされているようである。
台詞の中に登場する「モスクワ」という言葉を全て 「極楽」に置き換えることによって、 彼女たちの虚しい空想感をより際立たせるのである。

また、この劇の最後には演出家による救済が行なわれる。
それは百十一年前の初演から幾度となく「モスクワ」に行けなかった 三人姉妹の枷を外すと同時に、 役者が役者であることを脱ぎ自由に自らの生の一歩を踏み出すキッカケとなるのだ。

 

出演
おうりが  加藤玲子
まあしや  佐藤七美
いりいな  遠藤麻衣
びさばは(地蔵菩薩)  尾浜義男
こず(牛頭鬼)  鈴木勇輝
めず(馬頭鬼)  石井陽平

照明  青山崇文
照明操作  柳田佑子
美術  笹野茂之(ウレタンを工夫工房)
小美術  森未央子
衣装  豊永純子
音響  根岸裕
舞台監督  宮田公一
制作  原田直樹
制作補佐  松原優子 中村貴恵

富山県利賀芸術公園、岩舞台にて/60分